欠航

If we do not smile,we work hard to make you smile!
(もし私たちが笑顔じゃなかったら、ちゃんと働いてるってことなのヨ、アンタたちお客を笑顔にさせてやるためにね。だから無愛想でも我慢なさい、ここはロシアなのよ。)
――アエロフロートロシア航空

今日はモスクワで同じ学校だった友人を見送りに、シェレメチェボ第二空港まで行く。彼は日本人だが、友人を頼りに韓国へ行き、韓国観光をしてくるというプランだ。そのため、彼はモスクワ発・インチョン行きのアエロフロートの飛行機に乗る。もちろん、僕も3日後にはこの空港から日本へ飛ぶわけだが。

最後に、彼や僕と一緒に見送りに来た友人と一緒に過ごす。早くモスクワを出たがっていた彼も、少ししんみりしている。何だかんだ言って10ヶ月も居た国だ、愛着が涌いてくるのだろう。


さて、そろそろ搭乗手続きの時間だ、カウンターはどっちかな…と、電光掲示板を身に行くが、どうしてか彼の搭乗する飛行機の情報が載っていない。


何かイヤな予感がするな…。と思っていると、僕のクラスの韓国人の友人Cを偶然見つけた。彼も友人が韓国へ帰るので見送りにきたらしい。


で、走ってきたのだろう、息を切らして彼が言う。


「聞いてくれ、飛行機は欠航だよ!」


え? なに欠航?


本当に欠航である。アエロフロートのカウンターでも、しかめっつらで「今日は飛ばねぇよ」との返答。じゃあどうすればいいんだ?どうやら、別の場所で次の便に乗る手配をしなければいけないらしい。


手配をできたのはいいのだが、次の韓国行きの便は20日、2日後である。あさってかよ!!


じゃあ、それまではどこに泊まればいいのか??


紆余曲折あったが、航空会社がホテルを用意しなければいけない、という情報を手にした。早速カウンターへ向かい、手続き。


結局、韓国に行くハズだった彼は、空港の真正面のホテルに泊まることとなった。本日帰るハズだったが、モスクワにもう2泊である。最後の最後でやってくれたな、ロシアよ、という感じだ。しかし、当の本人は「何か面白い体験だよ!」とどうやらご機嫌だ。まぁ一件落着、というところか。


で、一つ大きく気になるのが、これがもし滞在登録やビザの最終日に起きたらどうなるのか、ということ。ロシアでは滞在登録やビザによってロシアに滞在できる期間が定められており、もし万が一、これを過ぎてロシア国内にいると不法滞在になる。


幸いにも今回、友人の滞在登録・ビザ共に6月25日までであり、期間に余裕があるので不法滞在にはならない。しかし、もしこれが彼の帰国する日、そう6月25日に「飛行機は飛ばないよ」なんて言われたらどうしたらいいのだろうか。「飛行機は6月27日だ。」滞在登録・ビザで許可された期間を完全に過ぎてしまう。こちらは悪くないのに不法滞在扱いになるのだろうか。怖い話である。

 ベルニサッシ

モスクワ最大のお土産市場、ベルニサッシへ。帰国を前に、お土産を購入するのが目的だ。ここの市場は種類が豊富なだけではなく、値段も交渉次第で相当安くなるのが大きなメリット。店を構えたデパートにあるような土産店と違い、売り手も値引きをすることで商売をしているので気がラク。特に、関東出身で値切るのに慣れていない自分にとっては気軽に値引きを要求できるのはありがたい。

市場だが、入場料が10ルーブル(約40円)かかる。ロシアの民族衣装を着たおばさんがレシートをもぎってくれるのだ。入場料は季節や時間帯、曜日によって変動するようで、僕が帰路についた17時頃は入場無料だった。


この市場、他の通常の市場と違う点が多々見られ、非常に好感を持った。


まず、市場にありがちな喧騒や、「何となく危険な、アングラな雰囲気」というものは感じられなかった。店の構えも無愛想なテントなどではなく、ロシアの田舎っぽい雰囲気を出した、木造の優しい造りが主流であった。まるでテーマパークのようだ、と表現しても過言ではない。


さらに感心したのは、売り子の態度。外国の市場にありがちな、強引に売りつけようとする態度はあまり見られなかったし、むしろ愛想がすごくいい。しかも買い物を終わった後も、ちゃんと笑顔で「Спасибо вам!(ありがとうございました!)」と行ってくれるところが多い。しかし、ロシアで今までこんな場所があっただろうか…。蛇足だが付言すると、ここに限らず普通の市場などでも、ロシア人の男性の売り子は概して「女性には」愛想が良い。でもそれは「大切なお客様」だから、というわけではなく、単に女性と話せて嬉しい、という至極純粋な動機だと思われる。それと比べると、ここの売り子は「客」としての愛想の良さが感じられた。


入場料を取っているだけのことはある。外国人観光客を呼び込むため、市場全体で努力をしているのだろう。


実際、外国人が客の半数以上を占めていた。僕以外にも日本人はいて、バックパッカーの女性、そして以前、劇場でたまたま知り合った、モスクワで学んでいる留学生とも偶然会ったりした。


自分はお土産選びはそんなに得意ではないが、歩くだけでも楽しめた。お土産にまよったらここに行くといいだろう。何かしら見つかる。


過ごしやすい市場だが、人が多いことには変わらないので、財布の暖かい観光客の財布を目を光らせて狙う輩もウロウロしているハズ。買い物に夢中になりすぎないのが大切。


で、お土産の選択肢がイチバン多いであろう、この市場。僕もここでたくさんお土産を買って帰りたいのだが、帰りの飛行機に乗せるスーツケースには重量制限がある。なので、あれもこれも、というわけにはいかない…。せっかくのロシア土産の山を前にしても、もどかしいものだ。

 荷物整理&日本へ発送

ロシアに来る直前、日本での僕の住まいは、渡航3日前まで片づけが全く終わっていない状態であった。寮の友人・先輩たちの協力がなければ、終わっていなかったと思う。

その反省から、先週あたりからコツコツと荷物を整理してきた。日本へ持ち帰る物、捨てていく物、モスクワに残る人にあげる物、日本へ発送する物。今回はかなりスムーズだ。


その日本へ発送する物を、先輩と一緒に出してきた。全て本、重さは20キロ弱。雨が振る中、国際郵便局まで白タクで向かい、手続きを終えて出してきた。


船便で、およそ2300ルーブル(約9200円)。1キロおよそ100ルーブル強の計算になる。日本に到着するのは2ヶ月くらい後だそうだが、日本に帰っても可及的速やかに必要とする本ではないので問題はない。それに、航空便だとムチャクチャ高くなる。


本のない自分の部屋は、整理中の荷物で溢れて非常に殺風景である。決して本をインテリアとして見ていたわけではないが、本棚で列を作っていた書籍がなくなったのはやはり寂しい。


本格的にモノがなくなっていく部屋は、帰国がすぐそこであるということを何よりも如実に物語っている。こっちに来る直前も、なんとか片付けた、ガランとした部屋で一人過ごし、出国が間近であることを痛感した。


帰国まであと5日!!

 帰国まであと8日!

6月13日(本日)

さて、学校に授業も終わり、あとは帰国。因みに、フィンランド旅行は、残念ながら予算オーバーのため取りやめ。


最近、モスクワで机を並べた先輩が帰国した。空港へ見送りに行ったのだが、自分も10日くらいしたら見送られる立場になる、と思うと、複雑な気分だ。

 近代史博物館

6月某日

近代史博物館 Музей Современной Истории России へ行った。ここへ来るのは2回目(1回目はこちら)。そのため、展示は本当にざっと見て周った程度。


驚いたのは、来館者の少なさ。僕がいたときに見学をしていたのは、自分と、どこかのおじいさんだけである。しかもそのおじいさんもロシア人ではなさそうだった。広くて展示も充実しているこの博物館、立地も良い。しかもこの日は休日である。それなのに、この訪問者の少なさ。主にロシア革命についての展示を扱っているのだが、ロシア人はロシア革命に興味がないのだろうか。


この博物館といったら、不思議なみやげ屋。ソ連時代の電話やラジオと言ったアンティーク、そして昔の切手や貨幣などはまだわかる。なぜか昔の日本円や、中国の記念切手があるのも許そう。意外と面白いし、案外掘り出し物が見つかるかもしれない。


しかし、今回見つけたのは、なんとNBAの選手のトレーディングカード!! どうやらアメリカ製、しかも最近作られたカードのようだ。NBA選手のどこがロシアの近代史と関わりを持っているのか、小一時間問いただしたい。


いろいろ面白いモノがたくさんあるのだが、本当に無節操なみやげ屋である。

 クレムリン へ

6月某日
モスクワと言ったら、クレムリン Кремль。モスクワにやって来た観光客が必ず訪れるであろう、クレムリン。今思うとこれまで訪れてなかったのが不思議な位だが、特段興味もなかった。しかし、ロシアの政治と文化の中心地と言えるこのクレムリンには、一度は訪れておきたい。クラスの友人と行った。

クレムリンとは、モスクワ中心にある城塞のこと。その城塞の中に、ロシア連邦大統領府 Сенат と言った政治関係の重要な施設、ウスペンスキー大聖堂 Патриарший Собор Успения Пресвятой Богородицы と言った祭祀用の教会、そして武器庫 Оружейная Палата やダイヤモンド庫 Алмазный фонд と言った「宝物庫」まで置かれている。


その内、我々が向かったのは武器庫である。「武器」とあるが、いわば工芸品の博物館である。17〜18世紀前後に作られた、きらびやかな宝物が多かったが、良くも悪くも特に目を引いたのが「女帝アンナの王冠」。金の王冠をベースに細かい宝石がちりばめられており、いかにも王族用の冠である。金の冠をベースに各種宝石がちりばめられており、結構ゴテゴテして趣味ではなかった。しかし、「王」のシンボルとしての存在感は抜群であり、数ある展示物の中でもひときわ異彩を放った王冠である。


武器庫を出て敷地内に出ると、様々な建造物が競うようにその姿を見せてくれる。そして同じく、特別の制服を着た警官があら捜しをするかのように観光客を見てくる。ちょっとでも歩道から(おそらく政治家用の)車道に足を踏み入れると、笛で警告してくる。政治の中心地だから警戒するのはわかるけど、あんまり居心地のいい感じではなかった。