白鳥の湖 第一夜

今日は、2ヶ月くらい前に買っておいたチケット「白鳥の湖」の、待ちに待った公演日です。会場はボリショイ劇場。正式名称は、ロシア国立ボリショイ劇場Государственный академический Большой театр Россииというそうです。(直訳すると「国立の、古典主義による、ロシアの大きな劇場」?)チケットの値段は800ルーブル(約3200円)。ロシアにしては、かなり高い値段です。でも、世界トップレベルの劇場の、超有名な題目。それだけの価値はあると思って購入しました。

そんな風に勇ましく言ったのはいいんですが、着いてみると席はいちばん悪いпервый ярус(第一サークル席)つまり、舞台からいちばん遠い3階席、その中でも後ろから2列目の席。やっぱ、買うときに「いちばん安い席で」と言ったのがまずかったなぁ。
で、さらに驚愕したのが、学生チケットで入ってきた人たちがいたこと。しかも、僕の席のすぐ近くです。その辺のロシア人に聞いたら、彼らは席がなく立ち見になるのですが、破格の入場料、なんと20ルーブル(約80円!!)でいいのだそうです。ほとんど同じ位置なのに、この入場料の差はなんだろうと思ってしまいました。そして、今度は、というか明日はこの学生チケットで観に来てやる、と心に誓いました。


さて肝心の公演ですが、いつになく興奮してしまいました。さすがボリショイ劇場、演技も良いし音楽も素晴らしい。そして一昨日行ったクレムリン宮殿と大きく違うのは、バレエもしくはオペラ専門の劇場だけあって、音響もいいし、何より高揚感がものすごい。ちょっとした所に劇場らしさを感じられ、クレムリン宮殿よりも「劇場に来たぁ!」というテンションになります。公演中は一人でハイテンションでした。


音楽、問題なし。スピーカーを通さない演奏で十分聞こえるので、本当に迫力があります。また、演出も素晴らしい。前回のように、脇役の道化師が目立ちすぎるということもなく、主役陣を立てる役に徹していたのには好感が持てました。非常によくまとまっていたのではないか、と思います。また、王女、王子、悪魔の3人はキャラがはっきり出ていてわかりやすくもありました。ちなみに、パンフレットによるとオデット役の女性は1984年生まれ、つまり僕と同じ年。それでもすでにかなりの実力派で、数多くのバレエで主役を務めています。いろいろな国へ公演していますが、東京にも公演に来たことがあるらしいです。普段はドイツ・ベルリン国立劇場にいるだか何だかで、今回は凱旋帰国公演とのこと。そんな彼女の名前は、ポリーナ・セミオノヴナПолина Семионова。覚えておこうかと思います。僕の帰国後、来日したらぜひまた観たい。


問題を挙げると、脇役人の動きがやや統一に欠けていたこと。同じ動きをするにもタイミングが一様ではありませんでした。やっぱりビシッとそろっていた方が綺麗だと思うのですが。そういう点でいうと、前回のクレムリン大会宮殿の方が上であると思います。


まぁそれでも、僕のテンションは下がることをしらず、公演終了後も鼓動が止まりません。なので、この興奮を少しでも分かち合いたくて、いつもだったらそんなことしないのですが、近くにいた日本語を話していた人たちに話しかけてしまいました。日本人でした。「いやぁ、よかったですねぇ!」月並みなこの感想を言えて、嬉しかったです。


前回、クレムリン大会宮殿で観た際も書きましたが、この「白鳥の湖」の結末には大きく分けて二つのバリエーションがあります。ハッピーエンドか、アンハッピーエンドか。前回のクレムリン宮殿の結末は、前者つまり最後はめでたしめでたし、でした。


しかし、このボリショイは違いました。後者、つまり最後は悲しい終わり方です。王女は白鳥から人間に戻ることなく、王子が倒し損ねた悪魔に殺されてしまったようです。それにより王子は絶望に暮れて掌を天に仰いで幕、です。
バレエの知識はなくとも物語の自分流の解釈くらいは少しはできるので、明日はちょっとこのことに踏み込んで書きたいと思います。つまり、明日も観に行きます。なぜなら、欠点もあったけど、でもかなり興奮させられた公演だから、明日も同じキャストでやるから、そして1枚20ルーブルの学生チケットの存在を知ってしまったから。