世界の最果て ムールマンスク②

列車のベッドは、確かに狭く寝心地も良いとは言えません。

ですが、慣れると意外と心地良く眠れるものです。というのは、列車の振動がすごく気持ちいいから。揺りかごにでもいる気分です。


目を覚まし、しばらく列車の振動に身を任せていると、再び眠気を催してきます。こんな感じで3度寝しますが、飽きてきたので景色でも見ようかと身体を起こします。只今午前10時ほど。ペテルブルグを過ぎ、方向としてはさらに北へ向かっていることになります。それを実感したのが、寝台の方の窓の向こうに見える日の出。つまり寝台の窓は東側にあることになります。寝台の窓は進行方向右側に位置するので、自分たちが北へ、北の最果てへ向かっていることが、ひしひしと感じられました。


進行方向左側は、人が2人通るのがやっとの通路。そっちの窓から見える景色を、ウインクを多用する、ロシア人にしては珍しく愛想のすごく良い男性の車掌さんと会話をしつつ、眺めてみます。


窓から見える景色は単調ですが、飽きません。見えるのは雪を被った針葉樹林、凍った雪、そして真っ白な村。そうした村々は、夏だけ居住するダーチャ(別荘)かもしれませんが、村の家には、煙突から煙を吐いている家々が時折見られ、誰かが居住しているのがわかりました。どんな人が、どんな生活を送ってるのだろう。モスクワの住居といったらマンションばかりなので、新鮮な発見です。


また、こうした風景では、ロシア人たちも遠い目をして眺めていました。こうした風景が、ロシア人の原風景なのでしょうか。


列車は時折、誰も乗ってこない、誰も目的地ではない駅で停車します。列車の整備と、おそらく運転士の休憩もしくは交代のためでしょう。こうした時間に列車を降り、外の新鮮な空気を吸ってリフレッシュします。モスクワ、そしてペテルブルグといった大都市からだいぶ離れている町なので、冷え切った空気がとてもおいしく感じられます。また、そこには売店があったり、物売りがいたりするので、ちょっとしたものを買って食べたりします。おかしかったのは、なぜかホームで生魚を売る人がいたこと。商売相手を間違っているとしか思えません。


日が落ちると、外はホントに何も見えない。外灯も人影も、まったくない。真っ暗です。景色を見ようと窓に近づいても、見飽きた自分の顔が映るだけ。こうなったら、部屋に戻り本でも読むか、Mやロシア人たちと話します。


夜、ベッドに身を投げ、ふと考えます。かたやモスクワ〜東京間は、飛行機で10時間。かたやモスクワ〜ムールマンスク間は、列車で38時間(ちなみに、モスクワ〜サンクトペテルブルグ間は列車で8時間、飛行機で1時間)。飛行機って、とっても速いんですね。
オーロラ見えるかなぁ。見えるといいなぁ。でも、今は列車の振動が心地いいなぁ…。

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おやすみなさい。