桜の園

性懲りもなく、また「桜の園」を見にいきます。でも、今度は別の劇場。かの有名なマールィ劇場です。ロシアに興味のない方も、名前くらいは聞いたことはあるでしょう。マールィ劇場ともなると、国家レベルの威信をかけた公演になります。と言っても、今日、行くのは新劇場の方。「地球の歩き方」に掲載している方ではなく、モスクワのはじっこにある劇場。ただ、ホールの雰囲気や俳優などは本館の方と変わりありません。
そんな仰々しいことを言いましたが、チケット代はすこぶる安い。最安値でなんと50ルーブル(約200円)。最高レベルの芝居をこの価格で楽しめるのは非常にありがたいです。ただ、席の周りの客質は最悪。高校生くらいの子供たちが始終ニヤニヤニヤニヤ。

さて問題の公演。劇場が違うだけで、こんなにも解釈が分かれるんですね。このマールィの公演は、前回見たモスクワ芸術座よりも「正統派」との印象を受けました。というか、思い描いていたのとより近い、というか。

登場人物。主要人物たるラネーフスカヤ夫人。モスクワ芸術座の方の彼女は、どこかすれてる中年女性、というイメージである。あさっての方向を向きながらタバコふかしてたり、喜怒哀楽をほとんど出す女性でなかった。愛人との逃避行に疲れた女性です。これに対して本公演の彼女は、いちいち小さなことに大げさに驚いたり、はしゃいだり。非常に表情が豊かで、幼い女の子がそのまま成長した感じです。原作の、世間知らずのお嬢様、という点で再現していたのは、このマールィの方だと感じました。
ほかにも多くの点で違いが感じられました。間合いの取り方、人物のちょっとした仕草。そういったことから、同じ人物でも、違う魂が宿ったように思われます。本当にちょっとした行動で。そんなことから、現実社会でも僕らはお互いを本当にちょっとしたことで評価しているのかな、と思うと、少しギクリとしました。