キャラ

多くのキャラが持ち味を出していたと思う。物語の進行をひとつの絶対的な視点ではなく、多面的な視点で構成することを意図したチェーホフの原作を尊重している、と言えると思う。元百姓の資産家ロパーヒンは、桜の園を買い取った際の狂気とも言える感情を前面に出していた。また前述のシャルロッタも、仕草のひとつひとつ、全ておどけた感じであり、まるで喜劇女優ばりの活躍である。(ただ、それが逆に彼女の出生=天涯孤独という点を強調しているようにも思える)。しかし、一点気になったのは、いわゆる主役のラネーフスカヤがかなり物静かに描かれていた点。原作のイメージではかなり感情的な人物像なのだが、今回は所作はおとなしく、声を荒げることもなかった。その点が唯一、気になった点。

さすが、表現芸術大国ロシア。その奥深さを思い知った感じである。