ロシア人と本

朝、学校に行く際、同じ寮、同じクラスの友人と地下鉄の駅でたまたま一緒になりました。地下鉄に乗り、一息ついて、周りのロシア人を見て彼が一言。「ロシア人って、やっぱ本をたくさん読むんだね。」

そうです、ロシア人は「世界で一番本を読む国民」とされていました。ロシアに来ればわかりますが、例えば今のような地下鉄の中。活字の本を読んでいる乗客の数は、間違いなく日本より多い。実際的な印象としても、かなり本を読む国民だというのがわかります。それに、ロシア人は「作家」をとても大切にする国民。博物館をたくさん建てたり、駅や通りの名前にしたり。作家に対しては思い入れを惜しまない国民です。


どうしてそんな国民性になったのか?


それは、本から情報、思想を得るしかなかった、という伝統があったため、でしょう。
ロシア人は、「自ら専制政治を望む国民」と言われるほど、歴史的に見て絶対的な権力にさらされてきた国民です。それゆえ、情報統制のための検閲制度が帝政時代からソ連時代までありました。だから、新聞や著作を通じて歴史や宗教、思想その他の情報を「直接」知ることは非常に困難でした。


では、当局に都合の悪い内容だけれども、どうしても語りたいことがある場合は、どうするのでしょうか? 方法の一つには、文学作品にそれらを「隠す」という形で発表する、ということが大きいものでした。検閲に通るように、オブラートに包んだり、表現を置き換えたり。読者にそれらを読み解くことを期待して。


まぁ、こんな見方によっては、検閲が皮肉にもロシア文学を発展させた、とも言えるでしょう。今は話が別ですが、かつては文学にそのような社会的な役割を大きく負っていた面もあって、伝統的にロシア人は読書を好む、とも言えるでしょう。