はじめての白タク

ロシアでは、日本よりも簡単にタクシーに乗ることができます。というのは、ロシアではお金を出しさえすれば、正規のタクシーではなくて普通の人が運転している車をタクシーとして利用できるから。このようなタクシーを白タクといいます。もしモスクワでタクシーを利用しようと思ったら、ほとんどが白タクになるでしょう。

この白タクに乗るとき肝心なのが値段交渉。白タクなので当然メーターはついていません。下車時に払うことになる値段は、運転手との交渉で決めなければならないのです。これをしっかりできないとトラブルの元になるのは必至。だからある程度のロシア語力と交渉力が必要です。


僕は今まで、先輩や友人が交渉してゲットした白タクに乗せてもらったことは何度かあるのですが、自分で値段を交渉して白タクに捕まえたことがありませんでした。もっと安い、地下鉄や路面電車があるからです。いつかは白タクの交渉を自分でやってみたいと思っていました。


でも、今日、そのチャンスが回ってきました!同じ寮の先輩や友人とスポーツバーに行ってマンチェスターユナイテッドvsポーツマスの試合を観てから帰るとき。行きは先輩が交渉してくれた白タクに乗って皆で行ったのですが、そこから帰るときに先輩が「じゃあ帰りはyu-net君に白タク見つけてもらおうか!やりたいって言ってたし。」というわけで、僕が白タクを見つけ、交渉することになりました。


時間はおよそ夜の10時半、場所はモスクワの中心部、新アルバート通り。白タクを捕まえるため、車道の脇から、腕を水平に伸ばして合図します。と、さすが大都会。すぐに車が停車しました。


ドアを開け、目的地を告げます。

僕「地下鉄シャボロフカ駅まで」
運転手「…。いいよ」
僕「いくら?」
運転手「いくらがいいんだ?」
僕「100ルーブル!」
運転手「ダメだ。200だ」
僕「じゃあ150は?」
運転手「ダメ」
僕「じゃあいらない」

本当は、150ルーブルで交渉をまとめよとの先輩のお達しでしたので150で十分だったのですが、ロシア人は最初の言い値から絶対に値段をつりあげてくるので、敢えて最初は100と言ったのです。で、相手が150にしようと言ったらそれで同意、いや200だと言ったら値切る。今までの先輩や友人のやり方を聞いていると、おおよそそんな感じでしたので、僕も真似てみました。


このような交渉を3回ほど繰り返し、150で行ってくれる白タクがあったので、それで交渉をまとめました。途中、運転手が携帯片手にハンドルを握ってたのにはヒヤヒヤしましたが、無事に寮に帰ることができました。


この白タク、交渉もそうですが乗るだけでも相当面白いです。ロシア人というか、その運転手の個性が垣間見える貴重な機会。今回僕が交渉した際だけでも、どうしても200と譲らない人もいれば、150で行ってくれる人もいました。運転中によくしゃべる人もいれば、無口な人もいる。(よくしゃべる運転手は、こちらのロシア語力を計っていたのだと思われます。)「200って言ったっけ? 250だろ?」と値段をごまかす人もいる。「道がわかんねぇから、ここでいい?」と言ってくる人もいる。


僕は数回しか乗ったことがないのですが、白タクはロシア人の特性がなんとなくわかる良い機会だと思っています。あ、ロシアだからちょっと危険なイメージもあるかもしれませんが、ちゃんと交渉してしっかりお金を払い、正当と思われることは主張すれば、問題ないでしょう。たぶん。