検察官

今日は、プーシキン記念ドラマ劇場Московский Драматический Театр имени А.С.Пушкнへ、ゴーゴリН.В.Гогольの「検察官」Ревизорを観に行きました。開場の30分前にチケットを100ルーブル(約400円)で購入。この劇場は3階建て、中規模の劇場ですが、内装がまるで貴族のお屋敷のように広くてきらびやか。

ゴーゴリの手によるこの作品は、ロシア演劇に新たな風を呼び起こした記念碑的作品です。田舎町にやって来たある男を、市長をはじめとする有力者が検察官と勘違いし、賄賂などで彼の機嫌を取り結ぶ。彼が街から去った後、終幕で取り違いに気づいた人々に、本物の検察官の到来が告げられる…、というお話。社会批判を込めた、毒のある笑いが特徴と言えるでしょう。


今回見た公演も、本当に正統的な「喜劇」の形をとっていました。極端なまでに検察官(と思い込んだ男)にへつらう姿もそうですが、人物の動きやセリフがこっけいで仕方がないのです。場内から笑いが絶えることはなく、本当ににぎやかな芝居でした。


だからこそ、ちょっと複雑な思いもします。おもしろおかしいのはいいんですが、ちょっとリアルすぎるように思えてしまって、これが現実の人間、現実の出来事かもしれない、と。賄賂を差し出す市長らの姿、それを受け取りいい気になる男…そこには悪人はいません。でも、社会正義に燃える善人もいません。この「検察官」の内容にリアリティがあり過ぎて、笑える喜劇にも関わらず、心から彼らを笑い飛ばすことは難しい、と思いました。


あと、パンフレットによると、俳優にチェチェン共和国出身の人がいるようなので少しびっくりしました。チェチェンといったら紛争のイメージがあまりにも強いですが、そんな国から芝居で食べてる人が来るなんて、想像もつきませんでした。